地域と福祉の分断 #02 知らなかっただけー偏見を越えるひとつのきっかけ

■ 偏見って、ほんとうはどういうこと?
「偏見」って聞くと、すごく悪いことのように思うかもしれない。
でも、福祉の現場で出会う“偏見”の多くは、わざと誰かを悪く思っているわけじゃない。
それはたいてい、「よく知らないから」「今まで会ったことがなかったから」生まれてしまう、ごく普通の気持ちなんだと思う。
■ てらこむに来た、車椅子のボランティア
ぼくたちが行っている「てらこむ」という子どもの学習支援では、子どもたちが安心してすごせる居場所を作っている。
そこに車椅子を使っている大学生のお兄ちゃんがボランティアとして来てくれるようになった。
彼は高校生のときに事故にあって、それから足が動かなくなってしまったとのことだった。
でも、明るくて前向きな性格で、「自分の体験を子どもたちに役立てたい」と、ボランティアに参加してくれるようになった。
■ 「なんで車椅子なの?」から始まった

そのお兄さんが最初に教室に入ってきたとき、子どもたちはちょっと戸惑ったような表情をしていた。これまで、身近で車椅子を使っている人に会ったことがなかったからだと思う。
しばらくして、小学1年生の女の子が小さな声で聞いた。
「なんで車椅子なの?」
そのとき、周りの大人はちょっとドキッと顔をしかめる。
でも彼はやさしく笑って、「事故で足が動かなくなっちゃったんだよ」と落ち着いて話してくれた。
すると、その子は「じゃあ、わたしが大きくなったら治してあげる! 看護師になるから!」と元気に言った。
そして、「この椅子、重い? 押してもいい?」とお兄さんをサポートしてくれた。
■ 子どもの目には、車椅子も特別じゃない
別の日、他の子が彼に「車椅子ってどうなってるの?」って聞いたら、彼はちょっと照れながら、「さわって見る?」と言って、みんなにさわらせてくれた。
その後も子どもたちはそれぞれ触ったり、質問したり興味津々だった。
そこから、子どもたちと彼の関係は、すぐに自然なものになっていった。
勉強の合間には車椅子を押したり、一緒にお絵描きをしたり。
だれも特別扱いなんてししていない。
■ 支える・支えられるをこえた関係
勉強やレクリエーションなど、ともに時間を過ごす中で、みんなが「一緒にすごす仲間」として、あたりまえに関わっていた。
いつのまにか彼が車椅子を車に乗せて、自分で運転して車に乗って見送るところまでが子ども達の帰りのルーティンとなっていた。
ある日、彼が話してくれた。
「子どもたちと自然に関われるか不安だったけど、“押してあげる”のひと言がすごくうれしかった。“かわいそう”じゃなくて、“助けたい”って思ってくれたのがありがたかった」って。
その気持ちは、支援する人・される人という考えをこえた、「人と人」としての信頼だったと思う。
■ 子どもたちから学んだこと
大人になると、「どう接したらいいか分からない」とか、「気をつかってしまう」と思ってしまいがちだけど、子どもたちは違う。思ったことをそのまま言って、相手をまっすぐ見つめる。
ぼくたちも、そんな子どもたちの姿からたくさんのことを学んだ。
「知らなかったからこそ生まれる偏見」は、「知ること」「ふれあうこと」で変わっていく。そして、その人を「障がい者」ではなく、「〇〇さん」として見るようになる。
それが、共に生きる社会=ソーシャル・インクルージョンの出発点だとぼくは思う。
■ 見えない“壁”をこわすには
地域の中で、障がいのある人とふれ合う機会がないまま大人になると、「知らない人たち」というフィルターがかかる。それが見えない壁をつくってしまう。
その壁をこわすために大切なのは、むずかしい知識や言葉じゃない。
「出会うこと」「話すこと」「一緒に時間を過ごすこと」。
それだけで、心の距離は近づいていく。
■ 一歩ふみ出す勇気が、世界を変える
今回の経験で、ぼくたちははっきりと感じた。
共に生きる社会は、ルールやポスターだけでは作れない。
日々のくらしの中で、「誰かと関わりたい」「役に立ちたい」という気持ちが生まれる場所でこそ、育つんだなと。
そして、それを実際に見せてくれたのが、あの子どもたちだった。
「知らなかった」ということに気づき、「じゃあ、知ってみよう」と一歩踏み出す。
それだけで、世界はちょっとずつ変わっていくんだと思う。
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