国が「福祉へのAI投資」に本気を出し始めています ― 令和9年度予算の概算要求から見えること

厚生労働省が2026年8月26日、来年度(令和9年度)予算の概算要求を発表しました。

「概算要求」というのは、各省庁が「来年はこれだけ予算がほしい」と財務省に要求する段階のもので、まだ正式決定ではありません。
年末の予算編成を経て、内容や金額は変わっていきます。

とはいえ、今回の要求には、福祉や介護の現場にとって見過ごせない方向性が示されていました。

今日はその内容と、私たちケアのみらいとして考えていることをお伝えします。

予算全体は過去最大級の伸び

一般会計の総額は36兆5803億円で、今年度より約1兆5370億円(4.4%)の増加です。増額幅が1兆円を超えるのは異例のことだそうです。

今回のキーワードは「投資」。
高市早苗首相が掲げる「『強く豊かな日本』投資枠」として1兆337億円が計上され、その中に医療・介護・障害福祉のテクノロジー導入を支援する予算として283億円が盛り込まれました。

何にAIを使おうとしているのか

厚労省が想定しているAIの導入先は、次のようなものです。

  • 見守り機器
  • 介護記録ソフト
  • インカム(業務用の無線連絡機器)
  • こうした機器を使いこなす人材を育てるための研修費用

ここで注目したいのが、「福祉分野における相談対応等へのAI活用」という項目です。自殺対策や生活保護の相談業務など、直接人と向き合う「相談支援」の分野にも、AI活用の予算が充てられる方針が示されています。

記録や事務作業だけでなく、相談支援という専門性の高い仕事にもAIが入ってくる。これは、現場で相談支援に携わる私たちにとって、他人事ではない動きです。

人材確保にも予算がつく

介護・障害福祉の人材確保にも138億円が計上されました。
改正社会福祉法にもとづく、都道府県ごとの「福祉人材確保の協議会」の設置を後押しする内容です。
また、介護福祉士を目指す人への修学資金の貸付や、養成施設への介護ロボット導入支援も含まれています。

施設整備の面でも、障害者支援施設や女性自立支援施設などの整備費が、今年度の2倍にあたる83億円へと増額要求されています。

地方の中小事業所にとっての意味

ここまでの内容を、地方で10〜50名規模の福祉事業所を運営されている方の目線で読み直すと、いくつかヒントが見えてきます。

「うちには予算がない」が変わるかもしれない
記録ソフトや見守り機器の導入補助が具体化すれば、これまで「まずコストが」と躊躇していた事業所も、動きやすくなる可能性があります。

「入れたけど使えなかった」を防ぐ仕組みがある
機器そのものだけでなく、使いこなす人材の養成費用まで補助対象になっているのは、過去にシステム導入で苦い経験をされた事業所にとって心強いポイントです。

自治体との新しい接点が生まれる
都道府県単位の「福祉人材確保の協議会」ができれば、これまで法人単独では届かなかった自治体の枠組みに参加できる可能性があります。

ただし、これらはあくまで概算要求の段階です。

実際にどんな補助金が、いつ、どんな要件で公募されるかは、年末の予算編成と来年度の公募要領を見てから判断する必要があります。
「対象になる可能性がある。要確認」という前提は、常に忘れないようにしたいところです。

ケアのみらいとして、いま考えていること

私たちは社会福祉法人として就労継続支援B型、共同生活援助事業と相談支援、子どもの第三の居場所事業、子どもの学習支援事業を、株式会社として訪問看護とAI・ICT導入支援を、実際の現場で運営しています。
だからこそ、今回のニュースを「制度の話」として終わらせず、次のように受け止めています。

  • 相談支援の現場で行っているモニタリング報告や個別支援計画作成へのAI活用を、実践として言語化・整理しておくこと
  • 補助金の有無にかかわらず、今すぐ着手できる部分(記録業務の棚卸しなど)から、無理のない形で準備を進めておくこと
  • 都道府県の協議会など、自治体側の動きも注視しておくこと

現場を知らないITベンダーの提案と、実際に自分たちの法人で運営しながら試行錯誤している私たちの提案とでは、根っこの部分が違うと考えています。
国の予算の方向性と、現場の実感の両方を大切にしながら、これからも情報をお届けしていきます。


出典:厚生労働省「令和9年度厚生労働省予算概算要求の概要」(令和8年8月) https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/27syokan/index.html

💡本記事の内容は令和8年8月時点の概算要求にもとづくものです。予算編成過程で内容が変更される可能性があります。
カテゴリー: 代表ブログ

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