国際福祉機器展とAI・人工知能EXPOを視察して ― テクノロジーが変える「未来のケア」の可能性 ―

はじめに
先日(2025/10/10)、東京ビッグサイトで開催された国際福祉機器展(H.C.R)に行ってた。
毎年参加している展示会だけど、今年は特に「これからの福祉サービスをどう持続させていくか、未来のケアを作るためには?」を意識しながらの視察だった。
その中で改めて感じたのはテクノロジーの活用が、あたりまえだけど鍵になるということ。
介護機器・ICTの進化は「想定内」
長年見ていることもあり、介護機器やICT関連、記録システムなどの分野は、多少のアップデートはあるものの、「想像の範囲内」に収まっている印象であった。
車や車椅子、ベッド、入浴設備、トイレ、床材、カメラなど、それぞれの機器として少しアップデートしていて、施設内・外のハード機器と記録システムなどが連動する形が主流になっている感じであった。
一方で、価格面では以前より導入しやすくなっているものも多いのが好印象だった。
中小規模の法人でも手が届く機器が増えており、「実現可能なテクノロジー」が少しずつ現実の選択肢になってきたと感じた。
AI技術の導入は、まだこれから
今回注目していた「AI(人工知能)」関連の展示は、思っていたほど多くはなかった。
介護・福祉機器の領域では、AIを本格的に組み込んだ製品はまだまだ発展途上で、現場ニーズとテクノロジーの間に距離がある印象であった。
とはいえ、顔認識による見守りシステムや記録自動化の試みなど、今後の発展を期待できる分野も多く見られた。
AI・人工知能EXPOで見えた「次のステージ」

福祉機器展のあとに、同時期開催されていたAI・人工知能EXPOにも足を運んだ。
こちらは一転して、AIスタートアップから大手企業まで、まさに「最前線のテクノロジー」が並ぶ空間であった。
各社のブースで話を聞いて印象的だったのは、「すでに実用レベルにあるAI」が数多く存在していたこと。
福祉機器展ではあまり見られなかったAI分野も、ここでは次のような活用事例が具体的に検討できた。
- チャットBotやAIエージェントによる相談支援
→ 利用者や家族、職員からの質問にAIが自動応答する仕組み。福祉制度や手続き、生活相談、緊急時の初動対応などに活用できる。夜間や休日の対応にもつながる。 - 記録や書類の自動整理システム
→ 職員が日々入力している記録をAIが自動で分類・要約し、ケアプランやモニタリングに反映。 - 画像・映像解析によるリスク検知
→ 転倒や徘徊などをリアルタイムに検出し、スタッフに通知する仕組み。
これらの技術を見て改めて感じたのは、AIは「人を置き換えるもの」ではなく、「人のケアを支える存在」になりつつあるということ。
特に、チャットBotやAIエージェントによる相談支援は、これからの福祉現場において欠かせないインフラになる可能性を秘めている。
今後は、福祉分野でもこうしたAIを法人や地域の仕組みに合わせてカスタマイズすることで、現場の実務や相談支援に直結した形で導入できると感じた。
福祉機器展では見えにくかった「ソフトウェアとしての福祉支援」の未来が、このAI EXPOでははっきりと見えた気がする。
NFT・Web3など、新しい技術の応用も視野に
さらに、NFT(非代替性トークン)やWeb3.0といった最新技術の展示もあり、福祉分野でも活用の可能性を感じた。
たとえば、寄付の透明化、ボランティア活動の可視化、障がい者アートの流通支援など、「価値の循環」を生み出す新しい仕組みとしての活用が考えられる。
「未来のケア」をどうつくるか
今回の2つの展示会を通じて感じたのは、
「ハード(設備)」よりも、現在はソフト(データ・AI・つながり)の時代だなということ。
最新機器の導入だけでなく、AIやデータを活用して人の力を補い、ケアの質を高める。
そして、テクノロジーを「人に寄り添う形」で実装していく。
そのために、私たちの法人としても、テック企業との連携を強めながら、「未来のケア施設」「地域共生型の福祉テクノロジー」の実現を目指していきたいと思う。
おわりに
テクノロジーは「冷たい機械」ではなく、人と人をつなぐ新しい橋になる。
その可能性を感じた今回の視察であった。
次の時代の福祉を支えるのは、きっと「温かいテクノロジー」。
私たちもその第一歩を、地域から踏み出していきたい。








