私たちの活動への想いとルーツ

活動への想い

誰かをささえる福祉から、互いにささえあう地域へ

私たち社会福祉法人蒼天は、精神障害者への支援をルーツとしていますが、
その最終的な目的(mission)は「地域協生社会をつくる」ことです。

今、日本では進行する少子高齢化・人口減少により、社会の活力が失われつつあります。就労人口が減少することで店舗が減り、インフラの維持も困難になり、生活そのものが難しくなっていく、この傾向は特に地方で顕著です。すでに地方では、より一層住民どうしがささえあい、協力して地域課題に取り組んでいく地域づくりが求められています。

「将来看護師さんになってお兄さんを助けてあげる」子どもの学習支援で生徒が車いすの先生に対して言いました。

「子どもたちと触れ合うことで自分が元気になる」子ども食堂でご飯をつくってくれているボランティアのシニアの方が言いました。

私たちは支援の必要な方々を「ささえている」と思っていましたが、同時に「ささえられる」ということがあることに気が付きました。

そういった経験から、地域づくりに必要なのは「ささえる/ささえられる」という関係性ではなく、お互いに足りないところを補い合う「ささえあい」なのではないかと考えるようになりました。

地域には大人や子ども、お年寄り、若者、障害などの様々な方が暮らしています。その誰もが「ささえる」または「ささえられる」存在になりえるのです。

私たちは"全ての人々への福祉"を理念に掲げ、子どもからお年寄りまで、必要な人に支援を提供するための福祉サービスをつくり提供することで、地域のみんなが安心して暮らせる環境を整えるために活動しています。

人々がすれ違って、互いの異なりを知る。
異なりを知ることは、ちいさな関心を生む。
そのちいさな関心は、大きな学びの意欲に育っていく。

私たちはその中で、これまで交わることのなかった「福祉」と「地域」をつなぎ、すべての人が交流できる場(空間)を提供することで、地域のみなさまが交流し、連携できるささえあいのネットワークを構築したいと考えています。

みなさまにもぜひお力を貸していただき、みなさまと共に、一緒に課題を解決し協力して生きていく地域社会をつくっていく、それが蒼天の想いです。

蒼天のストーリー

2012年より現在に至るまで、これまでに蒼天が辿ってきたストーリーの一部をご紹介します。

  • 2012年
    活動の始まりは自殺対策から蒼天の前身であるNPO法人SMSCが設立されたのは東日本大震災発生の翌年でした。発災から3か月時点で死者・行方不明者数は約2万3千人と発表され、被災地には多くの支援が集まっていました。
    しかし当時、国内の自殺者数は年間約3万人を数えていたのです。毎年東日本大震災以上の命が失われているのに、こちらにはほとんど支援がない。そこに憤りを感じたのが活動のきっかけです。精神障害者に自殺者が多く、また代表に支援活動の経験があったことから法人の目的は精神障害者支援活動とし、住む場所としてのグループホーム、働く場所としての就労継続B型事業所、話す場所としての相談支援事業所を立ち上げました。
    SMSC(ソーシャル・メンタル・サポート・コミュニティ)と名付けたのは、イタリアの精神科病院廃絶の起点となったトリエステ市のような精神障害者のための開かれたコミュニティをつくることを志したからです。コミュニティのために廃校を活用することについて市役所に相談を開始、これは「みんなの学校」につながっていきました。
  • 2017年・2018年
    目の前の子どものために支援事業を立ち上げ支援活動で関わったある家庭が貧困家庭で、一番下の子ども(小学生)がひきこもりでした。当時、この子をサポートできる支援制度は少なく、私たちも問題を解決できないでいました。ちょうど世の中では「子どもの貧困問題」が話題になり始めたころで、その話題の中で生活困窮者世帯の子どもの学習支援事業というものがあることを知り、その子どもを救うため稲敷市の生活福祉課と相談して同事業を立ち上げました。
    学習支援事業の中で、家庭の事情により満足に食事をとれていない子どもが多いことに気付き、地域の人たちと協力して子ども食堂を開始しました。こうした「目の前の1人のためにできることを探す」「そのために必要なサービスを実際につくる」というスタンスは、今でも蒼天の根幹になっています。
  • 2017年
    「Share金沢」と出会い「みんなのための福祉」へ方向転換共に働くスタッフの「代表と同じことを考えている人がテレビに出てました」の一言から石川県の社会福祉法人佛子園が運営する「Share金沢」の視察研修に行った代表が、大きなショックを受けて戻ってきました。「Share金沢」は総面積約1万1千坪の敷地に天然温泉、レストラン、ライブハウスなどのアミューズメントなどの施設や機能を擁し、住人どうしはもちろん地域の住民たちが楽しく集える地域コミュニティで、そこには障害者や高齢者、子どもといった福祉的ニーズの高い人たちのための福祉サービスも含まれているのです。
    「Share金沢では、高齢者、障害者、子どもたち、学生さんやそのどれにも属さない多くの人々が、コミュニティの中でごちゃまぜに存在していた。共生社会が凝縮されたごちゃまぜコミュニティなんだよね。みんな違うっていうことをみんなで共有できて、その上で『どうやってみんなで生活していこうか?』と話し合える。その話し合いこそ共生社会の第一歩」とは帰ってきた代表の談。
    ごちゃまぜの福祉を目の当たりにしたことで「『精神障害者のコミュニティをつくる』というSMSCの考え方自体が地域との分断を生み、偏見や差別を生み出すのではないか」という反省が生まれ、私たちはターゲットを精神障害者だけでなく地域の人も含めた「みんなのための福祉」へと変えていくことになりました。
  • 2019年
    「みんなの学校プロジェクト」スタート精神障害者だけでなく地域の人も含めた「みんなのための福祉」という考え方は、「みんなの学校」の萌芽とも言えます。この年の3月、私たちは稲敷市と「包括的な地域福祉事業の連携に関する協定」を締結。「みんなの学校プロジェクト」をスタートさせました。
  • 2020年
    自殺対策支援事業も官民連携で強化される活動のルーツである自殺対策は、稲敷市との「稲敷市いのちとこころの相談支援事業協力協定」締結で大きく進化しました。「稲敷市いのちとこころの相談支援事業」は、自殺を試みた人を救うため市内の官民11団体が連携する取り組みで、自殺未遂者の連絡先や名前を市の窓口「こころの相談」に集め、法律や労働、心の問題などの専門機関につなぎ、相談者のケアを強化する「命を救うリレー」です。
  • 2021年
    社会福祉法人設立地域協生社会の実現を目的として、「みんなのための福祉」を合言葉に活動していくため、社会福祉法人蒼天を設立しました。 支援が必要な人たち、関係する人たち、そして地域のみんなと共に歩き、共に困難を乗り越えていくことを願って名付けたものです。
  • 2025年
    子ども第三の居場所「みんなのひみつきち」を設立目の前の子どものために始まった子どもの支援事業も、大きな転機を迎えています。私たち蒼天は稲敷市および公益財団法人日本財団と三者協定を締結し、「みんなの学校いなしき」内に子ども第三の居場所を設立します。子ども第三の居場所は、地域の子どもたちが安心して過ごせる居場所であり、信頼できるスタッフや友だちと時間を共有する中で、子どもたちは生活リズムを整え、学びへの意欲も高め、一人ひとりの生き抜く力を育んでいきます。

代表メッセージ

相手のことを知り、関われるように

母が看護師として高齢者施設で働いており、その勧めで福祉を学ぶ大学に入り、卒業して高齢者向けデイサービスを就職先とし...と、子どものころから身近に「福祉」はありました。その福祉が「身近にあるもの」から「自分でやりたいこと」に大きく変わったきっかけは、デイサービスに勤めて2年ほどの時期に身近な人が「うつ」になったことでした。
何か助けになるどころか接し方すら分からない、でも力になりたかった私は、働きながら精神保健福祉士の資格を取ることにしたのです。これが自分で「福祉をやろう」と思った原点でした。

資格を取得した私は、精神障害者支援のための社会復帰センターに転職し支援員として4年間働きました。その間に精神科医療の抱える問題と正面から向き合うある医師と出会い、日本の精神科医療・精神障害者支援が国際的にかなり遅れているという事実を突きつけられたのです。国内には精神科多剤大量処方や社会的入院の問題があり、精神障害者の社会復帰は未だ少なく、その支援もあまりありませんでした。

また、国内の自殺者(その多くが精神に問題を抱えていた方です)の多さ(当時連続して年間3万人を超えていました)に衝撃を受け、憤りを覚えたのもこの頃です。私は本当に必要な福祉サービスの立ち上げを志すようになり、これが後に蒼天の前身であるSMSCの設立につながっていくことになります。

SMSCは、精神障害者が地域で開かれたコミュニティを形成することを支援していこうと設立されました。それが今では、子どもの支援や地域交流など幅広い分野に活動が広がっています。これは「目の前の人を助けたい」という想いから、実際に必要なサービスをつくってきた結果です。

多くの人は、障害者・子ども・高齢者といった支援を必要とする人たちと関われないでいます。それは、そうした人たちのことを知らないからではないかと感じています。

障害があろうがなかろうが、子どもだろうが大人だろうが、高齢者だろうが若い人だろうが、みんなが日常的に接し合うことができる場をつくることで、当たり前に相手を知り、理解することで関われるようになると考えました。もしかしたら「支援を必要とする人たち」という考え方が壁になっているのかもしれません。誰もが互いにささえあえるはずなのです。

今、私たちは社会福祉法人蒼天となり、廃校という地域資源を活用して、障害者・子ども・高齢者などに総合的な福祉サービスを提供すると同時に地域の様々な人たちが交流することができる、多世代・多属性交流型の地域生活拠点事業「みんなの学校プロジェクト」を開始し、様々な取り組みを進めているところです。「みんなの学校プロジェクト」は、互いにささえあえる地域社会の実現への大きな一歩だと考えています。

これからも蒼天は「あなたに寄り添い みんなで関わり ささえあう地域へ」の理念の下、分野や制度に捕らわれることなく活動を続けていきたいと考えています。ぜひ皆さまのご理解・ご協力をよろしくお願いいたします。

社会福祉法人蒼天
理事長 根本 敏宏

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